世界初!キダチアロエのイメージング質量分析でアロエの薬効成分を見える化

イメージング質量分析

世界初!キダチアロエのイメージング質量分析でアロエの薬効成分を見える化:福島大学と東京アロエの共同研究

新技術によりアロエ成分の分布と濃度が明らかに ― 健康科学および医療分野への応用が期待

東京アロエ(本社:東京都練馬区)は、日本の特産種である「キダチアロエ」に含まれる薬効成分をイメージング質量分析(Imaging Mass Spectrometry)技術を用いて、世界で初めて*可視化に成功したことを発表しました。

この革新的な試みは、福島大学 食品機能学II研究室の平 修(たいら しゅう)教授の下で行われ、キダチアロエが持つ健康効果を科学的に解明する一助になると考えます。

*イメージング質量分析に関する論文の範囲

アロエ成分の視覚化を試みたきっかけ

自社農園で有機アロエを栽培し、それらを健康食品や化粧品として販売している東京アロエは、昔から「アロエは医者いらず」「万病のくすり」といった” おばあちゃんの知恵”として評されている事象を科学的に明らかにする方法を模索していました。

伊豆半島にある東京アロエの自社農園

一方、2021年福島大学では、全国の大学で初めて「高速質量分析イメージ取得システム」を導入しました。このシステムは、食品の成分を超高精度で視覚的に表示することが可能で、食品の栄養成分の位置や量を明確に示すことができます。これにより、植物や栄養的特徴を把握しやすくなり、他の食品との比較分析も容易に行えます。

福島大学の「高速質量分析イメージ取得システム」の有効性を知った東京アロエは、キダチアロエの薬効成分を視覚化する実験を試みました。

福島大学 食品機能学II研究室について

平 修 教授の食品機能学II研究室は、質量分析技術を核として、特にイメージング質量分析を用いた食品成分の局在分析に関する研究を行っています。その研究は、食品科学だけでなく、ナノテクノロジー、バイオサイエンスの分野においても注目されています。Nano-PALDI MS(ナノ微粒子支援型レーザー脱離/イオン化質量分析法)を開発し、これにより食品中の微量成分や機能性成分の新たな検出法を提供しています。

【研究室の概要】
所属:福島大学 農学群 食農学類 食品科学コース
研究室所在地:福島県福島市金谷川1
研究テーマ:「見えないものを見る」をコンセプトにした食品機能に関する研究

【主な研究プロジェクト】
カタラーゼの魔法:カタラーゼという酵素の特性を利用した新しい食品加工技術の開発。
イメージング質量分析 (Imaging Mass Spectrometry):高度なイメージング質量分析技術を用いて、食品サンプル内の微量成分を可視化し、それらの分布や変化を詳細に解析します。この技術により、食品がどのように体内で代謝されるか、またその影響を具体的に追跡することが可能になります。

福島大学 平 修 教授について

【平 修(たいら しゅう)教授のプロフィール】
所属: 福島大学 農学群 食農学類 教授
専門分野: ナノテク・材料科学、ナノバイオサイエンス、基盤脳科学、機能物性化学
学位: 博士(材料科学)- 北陸先端科学技術大学院大学
研究者番号: 30416672
J-GLOBAL ID: 201401051272316092
受賞歴
2019年11月: 日本農芸化学会東北支部研究奨励賞, 日本農芸化学会
2016年5月: 奨励賞, 日本質量分析学会
2013年5月: 審査員賞, ナノ質量分析の高分子分析への応用, 日本分析化学会高分子分析討論会
2012年: 第13回年次大会優秀口頭発表賞, ナノ微粒子質量分析(Nano-PALDI MS)による新規農薬検出法の開発, 日本食品工学会
2011年: 第12回年次大会ポスター賞, おたね人参のジンセノサイド局在イメージング, 日本食品工学会
2006年: Excellent Poster Award, Functional Magnetic Nanoparticles for Medical Application, International Conference on Magnetism 2006

アロエの薬効成分について

アロエには、様々な機能性成分や薬効成分が含まれるとされています。今回の実験では、それらの中で主要なもの「アロエエモジン」「アロエニン」「アロイン」を計測しました。

アロエエモジン

抗菌作用や抗炎症作用を持ち、これにより感染症や炎症性疾患の予防や治療に寄与する可能性があります。

【論文例】マウス大腸炎および発がんモデルに対する低用量アロエエモジンの修飾作用(論文リンク)
研究代表者:藤田保健衛生大学 藤田記念七栗研究所生化学研究部門 教授 新保 寛
研究概要:アロエエモジン (AE)は抗がん活性や抗炎症効果を有することが報告されている。我々はApcMin/+マウスの大腸腫瘍発症のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)処置の有無に対する低用量AEの修飾作用を調べた。その結果、低用量AEの混餌投与は、DSS未処置・処置の双方でMinマウスの大腸腫瘍の発生を低下させた。さらに、低用量AE投与はMinマウスの大腸粘膜の細胞増殖能を抑制した。

アロエニン

アロエ属の植物に含まれるアミノ酸の一種で、特にキダチアロエやアロエベラに多く含まれています。アロエニンは、胃の粘膜を保護し、胃腸の調子を整える効果があるとされています。

【論文例】キダチアロエ:遺伝毒性、疾患病因に対する酵素特性の効果的な阻害、微生物学的活性の in vitro スクリーニング論文リンク
研究代表者:ポズナン医科大学薬理学部、ロキエトニツカ
研究概要:キダチアロエに含まれるアロエニンの抗炎症作用や酵素抑制効果について。特に、消化器系疾患に関連する酵素であるα-グルコシダーゼの抑制効果に言及されており、糖尿病治療におけるアロエニンの可能性。

アロイン

強力な下剤としての効果があります。腸の蠕動運動を刺激し、便通を促進するため、便秘の治療に使用されます。

【論文例】主作用以外に血糖降下作用をもつ健康食品と血糖降下薬の併用摂取による相互作用の研究論文リンク
研究代表者:京都女子大学 家政学部 教授 川添 禎浩
研究概要: キダチアロエ は緩下作用を目的としたアロエ健康食品に用いられ、アロエは血糖値に影響を与えるという報告がある。そこで、マウスにおいて、キダチアロエと血糖降下薬トルブタミド(TB)の相互作用を検討した。20%キダチアロエエパウダーはTB と併用すると血糖値をより低下させるが、TBの血糖降下作用を抑制し、血中TB濃度も減少させことから、TBの吸収を減少させると示唆された。キダチアロエとTBの併用による血糖値の低下には成分 バルバロイン(BA)* が関与していることが考えられた。しかし、アロエ健康食品の一日摂取目安量に含まれるBA量は、マウスのBA摂取量よりもかなり少量であった。*アロイン

キダチアロエのNano-PALDIイメージング質量分析の結果

本研究では、特にアロエの主要成分であるアロエエモジンやアロエニン、アロイン(バルバロイン)などが、植物体内でどのように分布しているかを詳細に分析。これまでの研究で得られた成分の存在情報を超え、その局所的な濃度までを精密に映し出しました。この成果は、アロエ成分の抽出や製品化の過程での品質管理、効率化に大きく寄与することが期待されます。

実施期間:2024年1月~4月
実験方法:高速質量分析イメージ取得システムを使用したキダチアロエ成分の視覚化

Nano-PALDIイメージング質量分析によるアロエ成分の一斉局在解析

【発表】2024年8月31日/日本食品化学工学会 第71回大会

【目的】アロエ(Aloe)は多肉植物で、観賞用、食用、薬用と知られるキダチアロエと主に食用として用いられるアロエ・ベラがある。葉の中にあるゼリー状の組織から抽出される粘液には、切り傷、火傷などに効果があるとされている。また、外用だけでなく、食すことで健胃効果があるとされるアロイン(アンスロン配糖体)やアロエエモジンなどもアロ含有しており、アロエは古来より「医者いらず」と言われている。今回、キダチアロエに含まれる、アロエエモジン、アロエニン、アロインを標的にイメージング質量分析(IMS)を用いて局在解析を行った。

【方法】標準品(アロエエモジン、アロエニン、アロイン)の検出を行なった。これらの物質は質量が500以下のため、既存MALDI法ではノイズが高く測定が困難であるため、低分子領域のイオン化に適したナノ微粒子支援型(Nano-PALDI法)を採用した。
キダチアロエを凍結し、クライオミクロトームで厚さ10μm切片を作成した。イオン化支援剤としてナノ微粒子を切片上に噴霧した。MALDI-Q-TOF質量分析装置(timsTOF fleX) を用いて空間分解能100μmでイメージングMS測定を行い、目的成分群の局在解析を行った。

【結果】アロエエモジンはプロトン付加体とNa付加体で検出され、どちらも果皮と果実の境界に局在していた。アロインはNa付加体でのみ検出され、果皮と果実の境界に局在していた。アロエニンは果皮に局在していた。古来より経験的に果皮と果実の間に多く含まれていると言われていたが、今回IMSで視覚的に局在を明らかにしたことで、基礎科学的なデータの裏付け以外に、今後、加工現場などで効率的なアロエ成分の抽出法の一助になると考えている。

【利益相反】本研究は、東京アロエ株式会社の資金提供により行われました。

キダチアロエのイメージング質量分析の解説動画

今回のキダチアロエのイメージング質量分析の実験結果を平 教授が詳しく解説している動画となります。


本研究に関するお問い合わせ先

東京アロエ株式会社  広報担当:伊達、奥園、長谷川
TEL:03-3994-5011 MAIL:info@tokyo-aloe.jp FAX:03-3948-0795
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